紛争対応・予防の基礎知識

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パワハラ等で訴えられたので弁護士に依頼したい~会社側の弁護士の探し方と選び方を解説

会社が社員からパワハラやセクハラといったハラスメント問題で訴えられた場合,会社に顧問弁護士がいれば,通常は顧問弁護士に相談して対応を依頼することになるでしょう。これに対し,顧問弁護士がいない場合で,身近に頼れる弁護士もいないのであれば,会社として弁護士を立てずに対応することも考えられます。しかしながら,パワハラ等の紛争については,裁判や労働審判といった裁判所を通した手続はもちろん,社員側の弁護士との交渉をするのにも,適切な解決のためには専門的な知識もつ弁護士の関与が必須といえますので,会社としては,社員から訴えられた場合には,直ちに弁護士を探し,対応方針を相談するべきでしょう。

そこで,本稿では,弁護士の探し方と,選び方のポイントを解説します。

パワハラ等対応・会社側の弁護士の探し方

会社がパワハラ等で訴えられた場合に弁護士を探す方法は,大きく分類すると,①インターネット,②弁護士会等の法律相談,③知人からの紹介の3つになるでしょう。これらについて,それぞれの概要や,選択の自由度,信頼性といった特徴について解説します。

①インターネット

インターネットで弁護士に関する情報が載っているウェブサイトを閲覧する方法です。

インターネットで探す方法は,幅広く弁護士を探せる上,一度相談してみて今ひとつという場合にも依頼を見送って他の弁護士を探し直すことがしやすいという利点があります。この意味で,選択の自由度は極めて高いといえます。

反面,インターネットの情報なので信用性については各自が吟味する必要があります。この点,ウェブサイトには,弁護士事務所や弁護士個人が独自に解説しているもの(本サイトもその一つです)と,いわゆるポータルサイトがありますが,後者については,一つのサイトで多くの事務所の弁護士を閲覧して比較できるというメリットがありますが,より高額な広告料を支払った弁護士を注目されやすい位置に表示させているサイトもあるようです。そこで,ポータルサイトで弁護士を探す際には,信頼性という点ではより注意が必要といえるでしょう。

このように,インターネットを使って弁護士を探す方法は,情報の目利きができる方にとっては,選択の自由度が高いためお勧めといえます。

②弁護士会の法律相談等

弁護士会が運営している法律相談や,弁護士紹介センター等を通して弁護士にアクセスする方法です。例えば,筆者が所属している東京弁護士会には中小企業法律支援センターが設置されており,「雇用・労務」の分野でパワハラ等に関する相談もできるようです。

各弁護士会の運用にもよりますが,法律相談を担当したり紹介されたりする弁護士は,運営側が非公開の名簿に登録された弁護士から決めるため,当方が予め選ぶことはできないのが通常です。つまり,会社としては,事前に弁護士の情報を知ることはできないため,当たり外れがあり得るという点で信頼性は疑問が残るかも知れません。ただし,東京弁護士会では,上記の中小企業法律支援センターにより紹介される弁護士の名簿に登録するための要件として一定の研修を受ける必要がありますので,一定の質は担保されているといえそうです。他の弁護士会の制度についても,基本的には問題のある弁護士は名簿に登録されないでしょう。また,実際に相談してみて今ひとつであれば,依頼を見送って,別の日程で法律相談を申し込んだり,別の弁護士を紹介してもらったりすることもできるのが通常です。ただし,この場合でも次にどのような弁護士に当たるか分からないという点は同じです。

この方法は,例えるなら,相談料や裁判等の準備に必要な時間という制約の範囲内で何度でも引けるガチャといったところです。ガチャといっても,当たりが多い(と筆者個人は思っています)ため,一定の信頼性はあるといえます。

③知人からの紹介

会社の経営者の方や社員の友人・知人や,会社の税理士等から紹介してもらう方法です。

紹介する人の良識を前提とすれば,問題のある弁護士は紹介されませんので,信頼性は比較的高いといえます。反面,相談してみて今ひとつの場合に,紹介してくれた方との関係で依頼を見送りづらいというデメリットもあります。選択の自由度という観点からは勝手がいいとはいえません。

以上をまとめると次の表のようになります。

選択の自由度 信頼性
①インターネット
②弁護士会の法律相談等
③知人からの紹介 ×

情報の目利きに自信がある方はインターネットで色々な弁護士のウェブサイトを比較検討し,実際に相談してみて,次のポイントを参考に依頼されるとよいでしょう。

弁護士の選び方のポイント

それでは,会社がパワハラ等で訴えられた場合に弁護士を探す方法として①インターネットを選択した場合に,会社側の弁護士をどのような基準で選べばよいのでしょうか。この点,選び方のポイントとしては,ⅰ)パワハラ等のハラスメント事案に関する知識・実績,ⅱ)弁護士費用,ⅲ)弁護士事務所の所在地,ⅳ)フィーリングの4点になろうかと思われます。以下,これらについて詳しく解説します。

Point1:パワハラ等のハラスメントに関する事件に詳しい・実績がある

パワハラ等に関する事件に限らず,特定の分野の知識や経験を有していることは,弁護士選びに大変重要といえます。

パワハラ等のハラスメント事案では,特に,対応を誤ると風評被害が発生するというおそれもある上,実際にハラスメントがあった場合には,法律上,再発防止等の事後対応も必要になりますので,紛争解決の入り口から解決後まで一貫して任せられるほど信頼できる弁護士に依頼されることをお勧めします。

弁護士が信頼できるかどうかは,最初の法律相談の際に,事件の解決のために最適な方針を立ててくれるか,という点が一つの基準になるでしょう。

Point2:弁護士費用に納得できる

会社にとって,弁護士に依頼する内容と費用が見合っていることは不可欠です。弁護士費用については,各弁護士のウェブサイトに明示されていることも多いですが,事案に応じて増減することも少なくないため,実際に法律相談をして,見積もりをしてもらうとよいでしょう。具体的には,タイムチャージ制で上限(キャップ)を設けるとか,顧問契約を締結することにより割安になるとか,着手金の分割に応じられるとか,色々な面で事案に応じた調整を図り,双方納得のできる弁護士費用を提示できる弁護士は親切だといます。

なお,会社側で依頼する際の弁護士費用については,別稿「パワハラ等で会社が訴えられた場合の弁護士費用~相場と体系を解説」も合わせてお読み下さい。また,筆者の弁護士費用については,こちらのページにまとめております。

Point3:弁護士の事務所の所在地

インターネットの検索エンジンで弁護士を探すと,全国の弁護士事務所のホームページが表示されますが,基本的には,会社の所在に近い場所に事務所がある弁護士に依頼すべきといえます。東京に会社があるなら東京の弁護士に依頼するのが望ましいということです。

これは,法律相談や打合せの際は対面が好都合であるため,会社の所在地が弁護士の事務所から近い方が,依頼後,弁護士としても打合せを設定しやすく,結果として質の高い弁護が実現しやすくなるからです。

また,パワハラ等の紛争が裁判まで発展した場合でも,会社の所在地か社員の住所地を管轄する裁判所で行われることが多いため,社員が退職して遠方に引っ越したという事情がなければ,会社の所在地かその近隣の裁判所が管轄になるのが通常です。そのため,遠方に事務所がある弁護士に依頼すると,裁判に出廷するための日当・交通費が発生するため,その分弁護士費用が割高となってしまいます。

このように,事件処理の便宜と費用の両面で,近場の弁護士に依頼すべきといえます。

Point4:フィーリングが合う

上記の1~3のポイントは弁護士の選び方としてどれも欠かすことのできない重要なものですが,実際に会ってみて,人間的に信用できそうとか,親身になってくれそうかという,いわゆるフィーリングも意外と重要といえます。

特に,パワハラ等のハラスメント事案では,パワハラやセクハラに該当する行為がなく,事実無根であるというケースでない限り,会社にとってきびしい方針をとらざるを得なくなるのが通常です。具体的には,解決のために,会社が大なり小なり賠償金を支払ったり,謝罪をしたりすることが想定されます。このような方針を納得して受け入れられるかどうかに,フィーリングの合う・合わないという問題は少なからず影響します。

フィーリングの合わない弁護士に依頼すると,依頼者・弁護士の双方にとってよい結果とならないことが多いように思われます。感覚的で言語化の難しい要素ですが,決して軽視することなく,実際に依頼するかどうかの判断基準にされることをお勧めします。

弁護士の探し方・選び方のまとめ

以上のとおり,弁護士の探し方は大きく3つの方法がありますが,パワハラ等のハラスメント事案で訴えられた場合には,対応に必要な時間に余裕がないこともしばしばです。そのため,②弁護士会の法律相談等でガチャを引き続けるのは難しいといえますので,信頼できる筋の紹介がないのであれば,インターネットで弁護士を探すのが適切といえるでしょう。

その際は,上記ⅰ~ⅳの選び方のポイントを参考に,法律相談に行くか,依頼してみるかを判断していただければと思います。

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