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マタハラとは?事業主の不利益取扱いの解説と具体例

マタハラとは,広義には,妊娠・出産等に伴い,職場で不利益な取扱いを受けたり,嫌がらせを受けたりすることをいいます。

法律上,会社がマタハラに関して気をつけるべきことは,①不利益取扱いの禁止と,②雇用管理上の措置の2つです。①については,男女雇用機会均等法(以下「均等法」といいます。)により,会社は,女性労働者の妊娠や出産に関し,一定の事由を理由として不利益取扱いをすることが禁止されるというものです。

また,②についても均等法に規定されており,職場において女性労働者が妊娠・出産等をしたことにより嫌がらせを受ける等,職場環境が害されることがないよう,雇用管理上必要な措置を講じる義務が課されているというものです。

本稿では,マタハラに関し会社が気をつけるべきことのうち,上記①不利益取扱いの禁止について解説します。②の上記事業主の雇用管理上の措置義務については,別稿にて解説しています。

不利益取扱いとは

“事由”と“取扱い”

均等法第9条第3項は,女性労働者の妊娠や出産に関し同条項で定める事由を理由として,解雇その他不利益な取扱いをしてはならない旨定めています。

この事由は次のとおりです。

  • 妊娠・出産したこと
  • 母性健康管理措置を受けたこと
  • 産前・産後休業を請求・取得したこと
  • 軽易な業務への転換を請求・転換したこと
  • 時間外・休日・深夜労働の免除を請求・免除されたこと
  • 育児時間を請求・取得したこと
  • つわり等の症状により労務の提供ができないこと・労働能力が低下したこと

また,不利益取扱いについてよくある例としては,

  • 解雇
  • 雇止め
  • 降格
  • 減給
  • 賞与の不利益な査定
  • 不利益な人事考課
  • 不利益な配置転換

などが挙げられます。

因果関係

均等法第9条第3項が上記の事由を「理由として」不利益取扱いをしてはならないと定めているとおり,同条項違反となるのは,上記の事由と不利益取扱いに因果関係がある場合です。

原則

この因果関係については,厚労省から通達(平成27年1月23日雇児発0123第1号)が出されており,これによると,妊娠・出産等の事由を契機として不利益取扱いが行われた場合は,原則として妊娠・出産等を理由として不利益取扱いがなされたと扱われます。

また,「契機として」に当たるかどうかは,基本的に妊娠・出産等の事由が発生している期間と,時間的に近接して解雇・降格等の不利益取扱いが行われたか否かをもって判断されます。例えば,定期的に人事考課・昇給等が行われている会社で,労働者が育児時間を請求・取得したとします。この請求後から,育児時間の取得満了後の直近の人事考課・昇給等までの間に不利益な評価を受けた場合には,「契機として」に当たると判断されることになります。

例外

ただし,妊娠・出産等を契機として不利益取扱いがなされたという場合でも,次のⅰ)又はⅱ)の場合には,例外的に,妊娠・出産等を理由として不利益取扱いがなされたとは扱われないとされます。

ⅰ)特段の業務上の必要性

①円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障があるため当該不利益取扱いを行わざるを得ない場合において,

②その業務上の必要性の内容や程度が,不利益取扱禁止の趣旨に実質的に反しないものと認められるほどに,当該不利益取扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情が存在すると認められるとき

ⅱ)合理的な理由による労働者の同意

①契機とした事由又は当該取扱いにより受ける有利な影響が存在し,かつ,当該労働者が当該取扱いに同意している場合において,

②当該事由及び当該取扱いにより受ける有利な影響の内容や程度が当該取扱いにより受ける不利な影響の内容や程度を上回り,当該取扱いについて事業主から労働者に対して適切に説明がなされる等,一般的な労働者であれば当該取扱いについて同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき

不利益取扱いの効果

それでは,均等法第9条第3項に違反して不利益取扱いが行われたらどうなるのでしょうか。

作為による不利益取扱いは無効

同条項に違反した不利益取扱いは,法律上無効とされます。

例えば,同条項に違反して労働者を解雇した場合でも,解雇は無効となるため,会社との雇用契約は存続しているものと扱われます。そうすると,後に労働者としての地位があることの確認を求める裁判を起こされた場合,会社は敗訴して,同条項違反となる解雇の時から労働者として扱わなければならなくなり,賃金もその時に遡って支払わなければならなくなります。

不作為による不利益取扱いは・・・

これに対し,同条項に違反する不利益取扱いであっても,本来与えられるべき利益が与えられないような,不作為による不利益取扱いの場合には,本来与えられるべき利益が与えられたり,法律関係が形成されたりしたと扱われるまでの効力はありません。例えば,同条項に違反するような不利益な人事考課をされ,昇進できなかったという場合でも,裁判で,昇進した後の地位の確認を求めることはできないのです。ただし,このような場合でも,不利益取扱いにより損害が生じているのであれば,損害賠償請求をすることは可能であるため注意が必要です。

まとめ

以上のとおり,妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いは法律上禁止されており,違反した場合には無効と扱われますので,どのような場合に不利益取扱いとされるのか,また,どのような場合に例外として認められるのかについて,正確に把握しておきたいところです。万が一会社が行った行為が無効とされた場合には,裁判で過去分に遡って賃金等を請求されることもあり,会社は少なからず打撃を受けることになります。そこで,特に人事権をもつ担当者レベルでは,マタハラが行われないよう徹底した啓発等が必要といえるでしょう。

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