紛争対応・予防の基礎知識

紛争対応

パワハラ等を和解で解決する際のポイント

パワハラ等の解決の方法は大きく分けて2つ

パワハラ等のハラスメントを巡る紛争の入口は,被害を受けた社員から,弁護士を代理人として内容証明郵便が届いたり,裁判所から訴状が届いたりした時点といえるでしょう。これに対し,出口,つまり解決の方法は,大きく分けて2つあります。裁判所を通さずに,先方と交渉をして,和解により解決する方法と,訴訟や労働審判といった裁判所を通した手続の中で解決する方法です。

本稿では,前者の交渉による和解による解決について解説します。

交渉による和解ができる場合,できない場合

パワハラ等の紛争の経過としては,①内容証明郵便が届いて交渉が始まり,和解により解決する,②交渉が始めるも,条件が折り合わず決裂し,裁判等の手続になる,③いきなり訴状等が届いて裁判等の手続になる,という3つのパターンに分類されます。これらのうち,③については,交渉により和解をする余地はなく,最終的に話合いで解決するにしても,裁判上の和解や,労働審判手続での調停というかたちになります。

パワハラ等のハラスメント事案では,行為が悪質であるほど,また,受けた被害が大きいほど,被害者側としては和解で解決しようという方針をとらない傾向にあります。例えば,被害者が自殺してしまったり,うつ病などの重い精神疾患に罹患してしまったりしたケースでは,和解交渉のプロセスを経ずに,最初から訴訟となる場合が多いでしょう。

これらの要素は,①と②のパターンの分岐にも影響します。和解交渉の場面でも,パワハラ等の行為が悪質であるほど,また,被害が大きいほど,被害者が提示する和解金の水準が高くなりますので,会社側としても,和解金の妥当性をより慎重に判断せざるを得なくなり,和解による解決は難しくなります。

和解のメリット・デメリット

パワハラ等の紛争では,会社にとって,和解で解決することに次のようなメリットとデメリットがあります。

メリット
  • 解決までの時間が早い
  • 解決までにかかる手間暇や弁護士費用が抑えられる
  • 請求されている金額が妥当である場合,裁判等になった場合よりも賠償金を減額できる場合がある
  • 口外禁止条項を設けることで,風評被害等のリスクを低減できる
デメリット
  • ハラスメントの事実関係が疑わしい場合や,請求されている金額が過大である場合,裁判等になった場合よりも支払額が多くなってしまう場合がある

このような会社側のメリット・デメリットから分かるように,請求の内容が妥当である場合,つまり,パワハラ等の事実があったことが確かであり,かつ,請求額が,その被害を賠償する金額に見合っている場合には,積極的に和解による解決を図るべきといえます。

逆に,会社としてパワハラ等の事実が認定できない場合や,請求額が過大である場合には,上記のメリットを天秤にかけて,割高な和解金を支払って幕引きとするか,裁判等を覚悟して,交渉を打ち切るか,方針を検討することになるでしょう。その際,和解金の割高をどの程度まで許容できるかは,裁判等にかかる弁護士費用の見込額も織り込んで検討するようにしましょう。

和解条項に盛り込むべき内容

交渉が進展し,和解条件が双方で概ねまとまると,和解内容を示談書や和解契約書といった書面を作成することになります。その際,和解条件で最も重要な点は和解金の金額であるため,金額や支払期限,支払方法等については最低限記載されることになります。

これに加え,会社側としては,口外禁止条項は是非盛り込んでおきたいところです。これは,パワハラ等の行為の内容やその前後の経緯,解決の内容等の一切に関し,第三者に口外しないことを約束する旨の条項です。これにより,会社の外部との関係では風評被害のリスクを低減し,会社の内部との関係では他の社員の士気の低下を防止することが期待できます。これは,事実を隠蔽するということではなく,パワハラ等の再発防止のための教育や啓発を会社が適切に管理して行うための措置の一環といえます。

また,清算条項についても盛り込む必要があります。これは,会社と,被害者である社員との間には,和解条項に記載されたもの以外に,何ら債権債務がないことを確認する旨の条項です。既に退社している元社員との関係であれば,単に債権債務なしと確認しておけば足りるのが通常ですが,在職中の社員との関係では,今後も雇用契約上の権利義務が相互に発生しますので,工夫が必要です。

まとめ

以上のとおり,パワハラ等が原因で紛争が始まった場合,事案に応じて,和解による解決ができそうか,また,相手方の請求内容から考えて,和解による解決が望ましいのかを分析して,会社側としても解決方針を決定することになります。解決の糸口が見えた場合には,仕上げとして和解契約書等の取り交わしを行いますが,その内容は,紛争を終局的に解決し,周りへの影響も可能な限り抑えられるようにしておきたいところです。

このような解決方針の決定,それに基づく交渉,和解条項の検討といった手続には,専門的な知識が必要となります。そこで,相手方が弁護士を代理に立てた場合には,会社側としても,弁護士に依頼されることをお勧めします。

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